NIPTについて

胎児ドックとNIPTの違いとは

胎児ドックとは

胎児ドックとは、胎児超音波検査のことで妊婦検診にて行われる通常超音波検査とは異なります。通常超音波検査は胎児の成長具合や母体の状態を確認することを目的としていますが、胎児超音波検査では胎児の全身をくまなくチェックし発育の異常を見つけることが目的とされています。

全身というのは骨格や顔面、手足の状態などの外見的なところももちろん、脳や心臓、膀胱や外性器などの内臓の形態についても時間をかけてじっくりと観察します。あくまで超音波機器を使って観察するのでDNA異常の有無などはわかりませんが、胎児の首の後ろの厚さ(NT)や発育状況などから先天性疾患があることを指摘することもできます。

行われる時期は妊娠初期(妊娠10週~13週)、中期(妊娠18週~20週)、後期(妊娠28週~31週)の3回ありそれぞれ胎児の発達に合わせて成長の様子を詳しく観察していきます。

NIPTとの違い

胎児ドックとNIPTは、どちらも出生前診断の非確定検査に分類されます。しかしこの2つの検査は異なる点も多く、検査を受けられる妊婦さんについても違いがありますのでどこがどう違うのか詳しくご紹介していきます。

①検査の精度

出生前診断を受ける方やそのご家族にとって、この検査で出た結果が本当に正しいのかというところが一番大切なポイントですよね。

胎児ドックの検査精度は50-70%程度といわれており、決して高い数字とはいえません。エコーを通して人の目で確認するうえに、そのときの赤ちゃんの位置によって見えやすさ見えにくさなどもありますので、精度に関してはこれ以上高くすることは難しいと思われます。

そのため多くの医療施設がこの胎児超音波検査だけでなく、母体血清マーカー検査という血液採取をする検査を組み合わせての診断を実施しています。

一方NIPTの検査精度は99%といわれており、高い精度を誇ります。母体血液に含まれる胎児のDNAを集めて検査を行うため、何かを観察したり赤ちゃんの位置に影響されたりすることはなく、明確に検査結果が出てきます。

ただしどちらも非確定検査に分類されるので、検査で陽性の疑いがあるといわれた、陽性という結果が出たという場合には必ず確定検査(羊水検査、絨毛検査)を勧められます。

②検査にかかる料金

胎児ドックの検査料金は、医療施設によって異なりますが大体30,000~40,000円程度がかかります。そこまで高額ではないので、料金の面で言えば比較的受けやすい検査だといえます。

一方NIPTは合計で20万円以上かかるのでかなり値段が高く、この料金がネックでNIPTを諦める、という方もいらっしゃると思います。NIPTは検査結果が陽性、陰性とはっきり出ることがほとんどでかつ精度が99%と高いため結果が正しい場合が多く、陽性だったときにどうするかを想定した心の準備が必要です。

そのためNIPTを実施する前と後では認可施設(一部無認可施設も含む)では必ず遺伝カウンセリングを受けることが義務付けられています。

この遺伝カウンセリングは1時間いくらと設定されていたり、1回いくらとなっていたりと色々ありますが医療施設によって金額の差は大きく、これによりNIPTでかかる金額の合計が大きく変わります。

③検査対象となる妊婦の条件

胎児ドックの場合、とくに年齢制限などはなく予約をすればどなたでも受けることが出来ますが、前述したとおり精度があまり高くないため他の検査(母体血清マーカー検査など)と組み合わせて診断されることが多くなっています。

この母体血清マーカー検査もとくに年齢制限はないですが、スクリーニング検査ですので結果は確率で出されます。たとえば21トリソミーについては1/500、18トリソミーについては1/500といったように知らされるので結果をどう判断するのかはご家族によって大きく違ってきます。

このように胎児超音波検査はどなたでも受けることはできますが、母体血清マーカー検査と合わせて行っても、胎児の状態を正確に知ることはできない検査となっています。

それに対してNIPTは、認可施設での検査を希望する場合は対象となる妊婦さんについて厳しい条件があります。

条件は以下の通り

  1. 妊娠10週以降の妊婦さん
  2. 以下のいずれかにあてはまる妊婦さん
    • 染色体異常症(21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーのどれか)がある子どもを妊娠または出産した経験がある場合
    • 高齢出産になる場合
    • その他胎児が染色体異常(21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーのどれか)になる可能性がある場合
  3. 夫婦またはカップルからの検査を受けたい意思がはっきりとあり、遺伝カウンセリングを受けて検査について十分に理解し同意を得られた場合

この3つに該当し、かつ施設が独自に決めた条件もクリアする必要があります。これだけ厳しい条件ですとほとんどの妊婦さんが条件から外れてしまうので、NIPTを希望するすべての妊婦さんが検査を受けられるわけではないという辛い現実があります。

年齢制限のないNIPT

このように認可施設ではNIPTを受けられる妊婦さんは限られており、多くは年齢制限で対象外となってしまうことが多いと思われます。

そもそもなぜ35歳以上という年齢制限があるのでしょうか?この年齢制限が設けられている理由は、陽性的中率と先天性異常の罹患率の2点ではないかと考えられます。

1点目の陽性的中率とは、NIPTで陽性と出た方の中で実際に疾患をもって生まれる確率のことです。こちらは20代で約50%、30歳で約60%、35歳で約80%、40歳で約93%と35歳をさかいに確率が急上昇し、20代では陽性と出た方の約半分の方が、結果的に疾患のない赤ちゃんを出産しています。

2点目は21トリソミー、ダウン症に関してですが罹患率と母親の年齢に関する相関性が確認されていて、母親の年齢があがるにつれてダウン症の子どもが生まれる確率が高くなります。20歳では1/1450であるのに対し、30歳では1/940、35歳では1/350、40歳では1/85と、こちらに関しても35歳をさかいに一気に確率が上昇しています。

この2つの結果をもとに35歳以上という年齢制限があると考えています。

しかし、35歳未満の方でも1人目がすでに持病を抱えていたり障害がある子どもであったりする場合や、家庭の事情で先天性疾患を持つ子どもを育てることはどうしても難しい場合などNIPTを受けたい、という想いをお持ちの方は35歳未満の方でもたくさんいらっしゃることと思います。

そんな切実な想いに答えるのが無認可施設と呼ばれる、年齢制限のないNIPTを実施する施設です。無認可施設というと、あまりよくないイメージを持つかもしれませんが、きちんとした検査を提供してくれる無認可施設もありますので安心してください。

無認可施設の場合、認可施設のように検査を受ける側の条件がとくに決められておらず、希望すればどなたでもNIPTを受けることが出来ます。

ただし認可施設が義務付けられている遺伝カウンセリングに関しては、無認可施設では行われないことが多く結果をどう判断していいのかわからず途方に暮れてしまうこともあります。そのため無認可施設であっても、きちんと遺伝カウンセリングを実施するなどアフターフォローが丁寧である施設がおすすめです。